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2010年3月

2010年3月31日 (水)

不動産売買に基づく所有権移転登記手続につき売主より嘱託を受けた司法書士に売主の所有権移転登記意思の確認を怠った過失がある場合に、買主に対し不法行為に基づく損害賠償責任があるとされた事例 さいたま地裁平19・7・18判決 (平成22年3月31日更新)

 本件は、不動産業者Ⅹが、仲介者Y1及びY2、司法書士Y3及びY4に対して、Aからその所有の不動産を買い受け、中間省略登記で所有権移転登記を経たものの、本件不動産の所有権を取得できず、売買代金相当の損害を被ったとして、Yらに対して債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求したものである。

これに対して、裁判所は、Ⅹの司法書士Y4に対する損害賠償請求は認めたが、その余のYらに対する請求はいずれも棄却した。その理由によると、ⅩとY1及びY2との間に、本件不動産の取引につき仲介契約ないし委任契約が締結されたことを認めることはできないから、

Y1及びY2のⅩに対する債務不履行責任を認めることはできないこと、Y3は買主Ⅹから本件不動産の所有権移転登記手続の嘱託を受けた司法書士で、Y4は売主の嘱託を受けた司法書士であること、

ところで、他人の嘱託を受け登記手続について代理することをその主要な業務の一つとする司法書士は、虚偽の登記を防止し、真正な登記の実現に務める義務があるから、司法書士が、登記手続をするに当たり、嘱託者の登記意思を確認すべきことはいうまでもなく、

その登記嘱託者に対する司法書士の意思確認の方法の程度は、登記に必要とされる書類の具備及びその記載内容をもって嘱託者の意思を確認する必要があり、必要書類の欠如ないし記載要件の欠缺があれば、専門家たる司法書士として、嘱託者の意思確認義務の解怠があるということができること、

この義務を怠った司法書士は、直接の嘱託を受けたわけではない登記相手方に対して債務不履行責任を負うものではないが、登記権利者は、登記義務者の意思確認がなされず、結果として真正な登記がなされなかった場合には不利益を被る関係にあるから

嘱託者に対する登記意思確認の解怠は、相手方当事者に対する関係でも不法行為責任を構成すると解すべきであるが、司法書士Y4は、司法書士として本件登記に関与するにあたって、売主Aの登記意思確認を怠っていたので、ⅩのY4に対する請求は認められること、

司法書士Y3は、登記権利者Ⅹの登記嘱託を受けたものであるが、登記の相手方の登記意思の確認は、相手方司法書士の言動や登記関係書類の記載から、意思確認が不十分と考えられる事情がない限り、相手方司法書士を通じて相手方の意思を確認すれば足り、司法書士Y3にはかかる事情はなく、司法書士Y4を通じて相手方Aの意思を確認しているから、ⅩのY3に対する請求は認められないと判示した。

司法書士 藤村和也 ホームページ http://www.kfsj.net

2010年3月 8日 (月)

マンションの賃借借契約におけるいわゆる定額補修分担金特約と消費者契約法10条の該当性 京都地裁平成20年4月30日判決 金融・商事判例1299号56頁 市民と法 No.55 58頁(平成22年3月8日更新)

【判決要旨】

 マンションの賃貸借契約におけるいわゆる定額補修分担金特約は、民法の任意規定の適用による場合に比して賃借人の義務を加重するもので、信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものとして、消費者契約法10条に該当し、無効である。

 2 これに対し、Yは、本件特約は、賃借人の義務を民法の原則より軽減したうえ、賃貸人・賃借人双方のリスクと利益を分け合う交換条件的な内容を定めたもので、消費者の利益を一方的に害するものではないから、消費者契約法10条に該当しないなどと主張した。

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効) 第十条 民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

司法書士 藤村和也 ホームページ http://www.kfsj.net

高齢者優良賃貸住宅の入居者の死亡の発見が担当者の鍵の管理ミスにより遅れたことについて、緊急時対応サービス等の利用に関する契約上の債務不履行があったとして、死亡者の相続人の慰謝料請求が認められた事例 大阪高裁平20・7・9判決  判例時報 2025号 27頁(平成22年3月8日更新)

Aは、平成一八年四月、京都市高齢者向け優良賃貸住宅を住宅公社から賃借して居住していたが、平成一九年六月二日、同住宅内で死亡した。

その際、担当者が現場に急行したが、合鍵が異なっていたため、息子のⅩが駆けつけるまで部屋を開けてAを発見できなかったことは、緊急時対応サービス等の利用に関する契約(以下「緊急時対応契約」という。)に違反しているとして、Aに対する債務不履行又は不法行為責任に基づき、及び、Ⅹは鍵が合わずに混乱する現場に急行を強いられ、Aの遺体に直面するなどして固有の精神的苦痛を受けたとし、Y(住宅公社)に対して、合計六〇〇万円の慰謝料等を請求した。

一審京都地判平20・2・28は、Yの債務不履行を認め、慰謝料一〇万円と弁護士費用二万円を認容したが(Ⅹ固有の損害賠償請求は棄却した)、Ⅹはこれを不服として控訴し、Yも附帯控訴した。

本判決は、緊急時対応契約に基づく義務は、入居者の緊急事態を感知して以降安全確認ないし救助又は関係機関への通報等が終了するまでは、入居者がその前に死亡したとしても終了せず、入居者の相続人との間で継続していると解すべきであるとした上、

その上、本判決は、安全安心な生活を送れていなかったこと及び実際にその期待を裏切られたことによる精神的苦痛に対する損害の賠償がなされるべきであるとした上、同契約の趣旨、サービス料の額、Yの過失の内容・程度、異常検知から約一時間後にAが発見されたこと等一切の事情を考慮すれば、精神的苦痛に対する損害は一〇万円とするのが相当であると判断し、一審判決を支持し、本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却した。

司法書士 藤村和也 ホームページ http://www.kfsj.net

登記済権利証の偽造を看過した、登記官と司法書士の責任 大阪地判平17・12・5(判例時報1298号89頁 登記情報559号 38頁)(平成22年3月8日更新)

事案の概要

 Ⅹ会社の代表者Aは、平成15年3月ごろに、土地を担保に融資を受けたいというBという人物を紹介された。自称Bは、本件土地の登記済証、印鑑登録証明書、運転免許証を示し、本件土地を担保に会社の運転資金として1億円を借りたい旨を話した。 当時、本件土地には、Bのために所有権移転登記と合併による所有権登記がそれぞれ経由されていた。 4月4日、Ⅹは自称Bとの間で、買戻特約付きで本件土地を6000万円で買い受ける旨の売買契約を締結し、その旨の土地売買契約書を作成し、自称Bから登記済証の交付を受けるとともに、司法書士Yに対し、本件土地の所有権移転登記手続を委任した。

Yは、同日、Aから登記申請関係書類を受領し、自称Bとも面談した上で、大阪法務局西出張所に対し、本件土地の所有権移転登記手続を申請した。この申請が受け付けられたことを確認できたため、Ⅹは、同日、自称Bに対し、融資金として現金2000万円を交付するとともに、合計4000万円になる小切手3通を振り出し交付した。

 4月8日にはB名義からⅩへの所有権移転登記が経由され、同日、小切手3通が換金された。また同月10日、Ⅹは自称Bに対し3400万円を追加融資することとし、Ⅹと自称Bは、先に融資した6000万円との合計である9400万円を代金額とする土地売買契約書及び同額を融資額とする譲渡担保契約書を作成した。Ⅹは、同日、諸費用を控除した追加融資金として2722万8000円を振り込んだ。

また、Bを紹介した者に対し紹介手数料の半額として185万円を手渡した。ところが、4月16日、B本人による申立てにより、自称BはFという人物がBを装ったものであって、Ⅹが自称Bから交付を受けた登記済証や、示された印鑑登録証明書、運転免許証はそれぞれ偽造されたものであったことが判明した。

本件所有権移転登記手続の抹消を請求する訴訟がBからⅩに対してなされ、Ⅹ敗訴の判決が確定して登記が抹消されたため、Ⅹは、登記官と司法書士Yが登記済証の偽造を看過したことによって損害を被ったとして、国及びYに対して損害賠償を請求する本件訴訟を提起した。

なお、本件登記済証には、受付が平成8年1月30日である旨付記された登記済印が押されていたが、この印影は当時使用されていたものとは異なっていた。西出張所では、改印がなされ、平成10年6月1日以降、新しい登記済印が使用されていたのである。本件登記済証には、この新しい登記済印の印影が押されており、旧登記済印とは「大阪法務局西出張所印」という部分の配列や字体が異なっていた。

判決の内容  大阪地裁は、次のように判事して、Xの国に対する請求を一部認容したが、Yに対する請求を棄却した。

【国に対する請求について】

大阪法務局西出張所で改印がなされてから約5年しか経過していない時期に本件登記申請がされたのであるから、「本件登記申請を受けた登記官としては、提出された登記申請書及びその添付書面を点検するに当たって、本件登記済印の印影に係る受付日の記載から、本件登記済印が前記改印前の時期のものであることを知り又は知り得べきであったといわざるを得ない」。 「また、登記官は、登記申請の際に提出された書面を点検すべき義務を負うとされており(不動産登記法施行細則47条参照)、登記関係書類が真正なものであるかどうか等の点検に当たっては、不動産登記制度を維持管理する専門家として正確な知識に基づく判断が求められているものというべきであるから、西出張所の登記官としては、少なくとも自己の勤務する西出張所でされた前記改印の事実及び改印前後の登記済印の印影の形状等について少なくとも概括的な認識を有しておくべきであったといえる」。

「そうであるとすれば、西出張所の登記官は、本件登記済印の印影の真否を審査するに当たって、前記受付日当時に使用されていた旧登記済印の印影を念頭に置いて、本件登記済印の印影の様式、形態及び刻印文言等を、まずは肉眼により総合的に観察し、疑義が生じたときは、旧登記済印の印影と相互対照するなどして、その真正を確認すべき注意義務があったというのが相当である」。裁判所は、登記官の過失を認め、本件移転登記経由後の4月10日にⅩが支払った追加融資金及び紹介手数料の賠償を国に命じた。

【司法書士Yに対する請求について】

「原告Ⅹは、被告Yが本件登記済印の印影がその受付当時に使用されていた旧登記済印の印影と異なることを看過した点に、同人の過失があると主張する。しかし、真正な登記済印の印影について印鑑証明のようなものはなく、また、司法書士が法務局で使用する印の改印に関する情報に接することはないものと認められる」。「そうすると、一見して不自然な印影であるといった特段の事情のない本件においては、被告Yにおいて、本件登記済証に押印された本件登記済印の印影が真正なものであるかどうかを確認することは極めて困難であったというべきであり、そうすると、同被告に本件登記済印の印影の真正について確認するべき注意義務があったということはできない」。

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