司法書士と地面師
司法書士は、不動産登記(権利登記)を最も行っている。もっとも業として不動産登記(権利登記)をできるのは、司法書士と弁護士だけである。法務局に提出する書類の作成は司法書士の独占業務(弁護士除く)であるから、他士が申請書を作成して、本人申請させるのを業として行うのは司法書士法違反であり、刑事罰の対象となる。
(業務) 第二条 司法書士は、他人の嘱託を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
二 裁判所、検察庁又は法務局若しくは地方法務局に提出する書類を作成すること。
三 (略)
(非司法書士等の取締り) 第十九条
司法書士会に入会している司法書士でない者は、第二条に規定する業務を行つてはならない。 (略)
第二十五条 第十九条第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。(略)
地面師による詐欺が行われた場合、代金を持ち逃げして、仮に所有権移転登記がされても抹消訴訟等により、登記は抹消される運命にある。地面師等の詐欺集団に損害賠償義務があるので当然だが、現実には損害の回復は困難である。騙された買主に依頼された弁護士は、その損害賠償の矛先を決済に立ち会った司法書士に向ける。司法書士会が加入している損賠保険(1000万限度)と任意の損害保険に加入している場合があり、保険及び個人資産がその目的である。
司法書士に対する訴訟としては、本人確認等に関する司法書士の過失等が問題となる。
免許証が偽造されることが多いようだが、「有効期限が間違っている 免許証の色(ゴールド、ブルなど)がありえないもの 番号がありえないもの(3桁目、4桁目は最初の取得年だがありえない数になっている)、ケースから出していない」など過失だと主張される。権利証のない本人確認情報で登記すればより責任が重くなる。
権利証の偽造(登記識別情報の偽造案件はないようだ)では、司法書士事務所の表紙の偽造から、ホチキスを塩水でさびさせる、和紙に色を付けるためウーロン茶で着色するそうだ。印鑑証明書の偽造は、本物の印鑑証明書の使用して文字等を偽造する案件もあるそうだ。本物だから透かしもあるそうだ。
詐欺事件は、捕まるリスクがあるので、地価が安い場合が多いので事務所の近辺ではすくないだろうが、研修でこのような事例の説明を受けるとぎょっとする。
有名な積水ハウスの事件では、地面師側がパスポートを偽造し、本物の印鑑証明書を取得、公証人の本人確認情報(権利証の代わりになる)も取得している。パスポートの偽造も巧妙だろうし、書類もばっちり揃っている。騙されてた司法書士は、積水ハウスのお抱えであろうし、莫大な利益をもらたすであろう決済をちょっと不自然な点があるで流せる司法書士がいるのか。外形上は、人物意思の確認ができているのだから。
司法書士 藤村和也
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